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これからの「正義」の話をしよう


こんにちは,静岡市葵区の弁護士浅野智裕です。

今回は読書の話です。

今回読んだのはマイケル・サンデルさんのこれからの「正義」の話をしようです。

よくある話で,トロッコ列車(電車)が暴走して止まれなくなって,線路上に5人いたときにその手前の切り替えポイントのスイッチを入れれば5人は助かるけれども切り替え先の線路上にいる1人は死んでしまう場合,スイッチを切り替えるべきか,という問題から始まり,様々なバリエーションを考えていくというものでした。

この本には架空のケースだけではなく,実際に起こった事故なども題材にして,それが道徳的に許されるのか,という問題を考えていきます。

答えが示されるわけではなく,それぞれ考えてみようというスタイルです。

私は法律家で,法律というのは基本的には道徳的に正しいことが書かれています。法律家が仕事をするうえで法律が適用されるかどうかは非常に重要なポイントになります。

もっとも具体的なケースでは,法律通りとしても道徳的に本当に正しいのかという場面があります。しかし,法律としてある以上は基本的には法律が適用されて,その通りにしなければなりません(例外もありますが)。そのときに道徳的に正しいのか,という観点は実はあまり法律家は持たないと思います。いわゆる悪法も法というのが基本的な法律の世界です(例外もありますが)。

また,法は,最低限の道徳ともいわれているところがあって,法であれば他人をある程度強制できるもので,強制できる以上,あまり広すぎてはいけない,という考えもあります。

なので,上に書いたように法律家が仕事をするうえでは法が適用されるか,がとても重要になります。

本書では,法が適用されるかどうか,という問題ではなく,道徳的に正しいものかどうかという観点で考えるので,法律家があまり考えない視点で書かれていて,あらためて法が正しいのか,ということを考えるきっかけになりました。

法はいつも正しいものではなく,間違ったものや時代の流れで当初正しかったものがいつの日にか,間違ったものになっていることがあります。

法律家としては法が適用されるか,が重要なポイントであることには変わりないのですが,あらためて法が正しいのかについて考える良いきっかけとなりました。