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相続法改正③ 預貯金の仮払い制度


こんにちは、静岡市葵区の弁護士の浅野智裕です。

以前の相続法改正の続きの話をしたいと思います。今後、相続法改正の話を何度か続けたいと思います。 

今回は預貯金の仮払い制度です。

まず現行法の解説からさせていただきます。現行法及び判例では、預貯金は相続財産に含まれ、当然に分割されることなく、遺産分割の対象となるものと解されています。これは、平成28年12月19日の最高裁判例で、従前の判断を変更したもので実務的には大きな影響のあるものです。

これが最高裁判例です↓
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86354

実は、この判例以前には、預貯金は、可分債権で当然に分割されるものなので、当然には原則として遺産分割の対象とならず、当事者の合意があったときのみ遺産分割の対象とするとされていました。なので、以前には、相続人全員の同意がなくとも預貯金の払戻をすることができたのです。もちろん金融機関は嫌がりますので実際にはなかなか大変でしたが。

これが平成28年12月19日の最高裁判例で変更されたわけです。

そうすると、今度は、逆に遺産分割ができるまで預貯金の払戻ができなくなるわけです。すると、相続人が、生活費に困ったときや葬祭費用のために払い戻すことができなくなったわけです。

そこで今回の相続法改正では、裁判所の手続きを経ないで一定程度の預貯金の仮払い制度を創設しました。

具体的には、預貯金の一定割合(上限有り)とは、相続開始時の残高×1/3×相続人の法定相続分となります。

具体例を挙げますと

被相続人 父
相続人 子2人
相続開始時の預貯金 600万円
600万円×1/3×1/2(法定相続分)=100万円

したがって、子はそれぞれ100万円の仮払いを求めることができることになります。

こういった制度があることで、相続人が、相続財産の預貯金があるのに預金が使えず困窮するといったことがなるわけです。 

ちなみにこの改正の施行は公布の日(平成30年7月13日)から1年以内となっています。