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新型コロナに関連して会社が休業になった場合の給与の取扱い①


若狹です。
最近,法人個人問わず,どなたと会っても新型コロナの話題ばかりです。状況が落ち着くのはいつのコロにナるんでしょうか。早期の終息を願うばかりです。
私が蔓延防止のためにできることは,諸々の行動を自粛してじっと耐えるくらいなのがつらいところです。みなさん同じだと思いますがこういう日々が続くと気が滅入っちゃいますね。弁護士会関係の会議もほとんどウェブ会議になりました。

各種報道によれば,明日にも緊急事態宣言(表明の準備入り?)が出そうだとか。
そこで,新型インフル等特措法,同施行令の各条文を素読し,感染症法等の関係法令を斜め読みしてみました。
改めてゼロから読んでみるとマスコミ等の記事では出てこない細かい部分の発見があります。「政府対策本部」の設置~廃止が,「既存のインフルエンザの病状」と比較し概ね同程度以下となっているか,が基準になっているところとか。(特措法15Ⅰ,21Ⅰ)

「緊急事態宣言」は,特措法(以下法律名省略)32条以下に定められています。

 

 

平文の解説だとわかりにくいと思うので,以下QA方式でまとめてみます。

Q:「緊急事態宣言」とは?
A:政府対策本部長(=内閣総理大臣)は,新型インフルエンザ等が国内で発生し,「全国的かつ急速な蔓延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし」たとき,又は,そのおそれがある事態が発生したときなどにおいて,緊急事態が発生した旨を公示し,国会に報告する。(32Ⅰ)

Q:「何」を宣言(=公示)するの?
A:①緊急事態措置を実施すべき期間,②区域(対象区域の変更可),③緊急事態の概要(32Ⅰ①~③)

Q:緊急事態宣言の最長期間は?
A:最長2年(32Ⅱ)

Q:緊急事態宣言の延長は?
A:1年延長可(32Ⅳ)

Q:緊急事態宣言はどのタイミングで終わるの?
A:宣言後から「緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認めるとき」まで。政府対策本部長(=内閣総理大臣)が,「解除宣言」を行い,国会に報告する。(32Ⅴ)

Q:宣言が出された場合の指揮系統は?
A:政府対策本部長(=内閣総理大臣)→指定行政機関の長・指定地方行政機関の長・指定行政機関の職員(権限委任)・指定地方行政機関の職員(権限委任)・都道府県知事等・指定公共機関。(33Ⅰ)
道府県対策本部長(=知事)は,総合調整に基づく所用の措置が実施されない場合で,特に必要があると認めるときは,関係市町村長並びに指定公共機関及び指定地方公共機関に必要な指示を出せる。(33Ⅱ)
※このあたりの指揮系統が頭に入っていると連日のニュースでの都知事の会見の見え方が少し変わりますね。

Q:これまで行われてきた「自粛のお願い」との違いは?
A:都道府県知事は,「生命の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請」ができる。(45Ⅰ)
都道府県知事は,「学校,社会福祉施設,興行場,☆百貨店,☆映画館,☆演芸場等に対し,施設利用制限若しくは停止又は催物の開催の制限又は停止等の要請」ができる。(45Ⅱ) ☆⇒床面積合計1000㎡~のみ(施行令11)
45Ⅱの要請に従わないときは,一定の場合,要請に係る措置を講ずべきことを指示できる。(45Ⅲ)
都道府県知事が,45Ⅱの要請や45Ⅲの指示をしたときは,遅滞なくその旨を公表する義務がある。(45Ⅳ)
※報道でご存じのとおり,ペナルティや強制力なしの「要請」であるものの,これまでの法律の根拠のない「自粛のお願い」とはトーンが全然違うことがわかりますでしょうか。「生命の維持に必要な場合を除き」って他の法律でもまずみかけない,かなり物騒なワードですよ。
【2020.4.27追記】
同「公表」は,逐条解説によれば,「利用者のため」とされています。つまり,利用者が閉鎖されているのを知らずに訪問しちゃったら不便なので,要請や指示をした場合には周知させるために公表を義務としていると考えられるのです。
つまり,(行政法上,かなり専門的な議論になりますが)「制裁的な意味を持つ公表」は条文上許されないと解すべきと私は考えます。このあたりは各地方公共団体の動き(特に,首長が会見等で市民による制裁を“事実上”扇動してはいないか)を注視する必要があると思います。

Q:民間の事業者が自粛要請に応じた分の補償はないの?
A:国・都道府県に補償が法律上義務づけられているのは,強制力をもって土地収用(49)や特定物資の収用(55)等を行った場合のみ。(62Ⅰ)
※「要請」に従った場合などの補償は行政・政治マター

Q:国政選挙や地方選挙はどうなるの?
A:特措法や公職選挙法に規定がなく,現状のまま公職選挙法に素直に従えば延期はできない,はず。
※今後新たに特別措置法が制定されるかもですが。

Q:債務の支払い猶予は?
A:国会閉会中でも,内閣が金銭債務の支払いの延期等について必要な措置の政令を制定できる。(58Ⅰ)
※この状態が長引けばこのあたりも議論になるかもですね。

Q:裁判や調停の進行はどうなるの?
A:特措法には特別な規定なし。裁判官の独立(憲法76Ⅲ)があるため,基本は各裁判体の判断。最高裁のこちらの資料の最終ページによれば,事件類型ごとに順位をつけて緊急性が低いものから順次延期?ちなみに,本記事執筆時点で(私宛限りでは)事前周知などはないです。
静岡地裁ではまだ未適用のIT裁判ならリモートワーク可能なんですけどね…。

 

 

なお,平成10年に制定された感染症法には,珍しく「前文」があります。
少し長いですが引用してみましょう。

人類は、これまで、疾病、とりわけ感染症により、多大の苦難を経験してきた。ペスト、痘そう、コレラ等の感染症の流行は、時には文明を存亡の危機に追いやり、感染症を根絶することは、正に人類の悲願と言えるものである。
医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により、多くの感染症が克服されてきたが、新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により、また、国際交流の進展等に伴い、感染症は、新たな形で、今なお人類に脅威を与えている。
一方、我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である。
このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ、感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。
ここに、このような視点に立って、これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため、この法律を制定する。

(※太字と下線は引用者)

ふんふん,“今の状態”で読むとまさにおっしゃるとおりといった感じ。
主語が,(憲法前文ですら「日本国民は」なのに)「人類は」ってところが非常にアツいですね。

本題に入る前のマクラが長くなりすぎたので,続きは後日別記事にて。