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「相続放棄、過去最多26万件」のニュース


弁護士の若狹です。

 

相続放棄が統計上過去最多になったというニュースがありました。
相続放棄を行なうと、最初から相続人ではなかった扱いになりますが、以下の3点がポイントとなります。

①「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」というのは解釈の余地が(結構)ある
亡くなったこと自体を知っていても、借金があるのを知らなかったり、前順位の相続人の相続放棄を知らなかったりした場合、亡くなってから3ヶ月を経過した後でも相続放棄が認められる場合があります。
熟慮期間の起算点繰り下げについて、判例・裁判例では比較的広く認める解釈を取っていますが、先延ばしは無用なリスクを増すだけなので、相続放棄に悩まれた場合はできるだけ早い段階で専門家にご相談ください。

②相続放棄するつもり/したつもりの”うっかり単純承認”に注意
相続財産を「処分」すると相続放棄できなくなるのでご注意ください。
この点も、葬儀費用・葬儀関連費用がどこまで認められるか、債務の一部弁済はどうかなど、判断が微妙なケースが多いです。
このあたり豊富な裁判例がある分野ではないのですが、葬儀費用は「処分」に当たらないとする傾向債務の弁済は「処分」に当たるとする傾向が強いようです。

③相続財産の管理責任が、「現占有者の注意義務」に限定する方向で民法が改正された(令和5年改正)

(改正前)
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

   ↓

(改正後)
相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

改正前は、文言上、どのようなケースで誰がどこまで責任を負うのか、必ずしも明らかではありませんでしたが、民法改正により、占有している人の財産保存義務が明記されました。
他の法定相続人が全員相続放棄を行なった場合、別途「相続財産清算人」を申し立てない限り、事実上ずっと相続財産の保存義務が継続してしまう点はご注意ください。
「相続財産清算人」の解説(ここも最近法改正があったところです)についてはまたの機会にしますが、平たく言えば、相続人がいない人/いなくなった人の相続財産処分に決着をつけるよう家庭裁判所から選ばれた人のことです。
最終的に余りの相続財産が出たら国に納めます。私も業務として何度か日本銀行に小切手を納めに行ったことがあります。